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二科展100回展に出展します

公開日: : 最終更新日:2016/11/19 あけのみつたかの表現哲学・キュレーション, 近況報告、その他

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皆さんお久しぶりです、画家のあけのみつたかです。

最近このサイトの更新が遅れた理由はいくつかあり、一つ一つ説明なんか始めると地球の寿命が終わっても説明が終わりそうにないので省略しますが、一番の原因は「公募展への応募に手こずった」ということになるでしょうか。

6月の末あたりから作業にかかり、8月の初めまでかかったので、一月と一週ぐらいの制作期間を要しました。

今までの制作でこれほどまでに時間のかかった作品はありませんでしたし(累計作業時間では今作が最長)、私自身、制作の最中に迷いが起こったことは否めません。

そこで今回は、今までの制作工程を振り返りながら、改めてあけのみつたかとしての制作理念について話をしてみたいと思います。

「エンターテイメント」と「人生観」の融合

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まず私が最初にイメージしていたのは「宇宙」と「人間」」というテーマです。

これに関しては私もどう説明していいのかわかりませんが、これからの芸術において、また、これからのエンターテイメントにおいては「宇宙」というテーマは欠かせないような気がしてしょうがないのです。

そもそもエンターテイメントという言葉は「楽しむ」を名詞化した言葉ですが、この「楽しみ」というものは「見えざる世界」「未知の世界」に思いを馳せた時にこそ感じられる事が多いように思います。

現代の人々が知り尽くしてしまった(知り尽くしたと思えるような)分野に関してエンターテイメントという言葉は当てはまらないのではないかと思うのです。

例えば数十年前には「ロボティクス」にロマンを感じた時代もあったと思います。

「ザ・フー」や「メトロポリス」というような大昔の映画では、ロボットは摩訶不思議なビームを発射する超次元的な存在として描かれています。


この動画はロボットを主題とした歴代のSF映画を紹介している

しかし、時代を経るにつれて、次第に人々は「ロボットとはなにか」と認識し始め、映画に登場するロボットは現実的なものになってきました。

そうして、現代のロボットを主題とした映画といえば「アイロボット」のように「人間との共存」といった渋すぎるテーマが主流となっているように思うのです。

もちろん一部の意見にしか過ぎないでしょうが、こうした「未知の世界への関心」というテーマから「身近なドラマ」へとテーマは変わっていく、という話はどこの世界でも起きうることです。

専門的な方からすればロボティクスという分野においてもまだまだ未発達で、未知の世界であることは間違いないのですが、世の人々の興味の対象からは外れ始めているように思います。

こうしたことを踏まえても、「未知の世界へのロマン」というのはエンターテイメントに欠かせない要素の一つであることは否めないのではないでしょうか。

要は「知りすぎることは、その分野に関して無邪気ではいられなくなる」ということを申し上げたいのです。

奇跡の瞬間を表現したい

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先ほどの話に戻しますが、「エンターテイメント性を含んだアートを作ってみたい」という気持ちは今作に限ったことではなく、実は2014年の秋頃からすでに持っていました。

それが結局、今年の抱負としてあげた「よりアーティスティックな作品を作りたい」という考えにもつながっていますし、今現在においても人後に落ちるつもりも全くございません。

また、一方で「人間」というテーマに関しても同じように関心を持ち続けています。

結局、芸術という分野においては「作家本人が感じた世界以上のものは作れない」と思っています。これを別な言葉で言い換えるなら「芸術作品というのは、その作者自身の人生そのものである」ということです。

様々な人生のドラマの中で、果たして何を握り締めて生きたか、ということが大事なのです。

アーティストの村上隆さんがこんなことを語っています。

「結局私達芸術家はこの時を待っているんです。奇跡を待っているんです。いろんな絵を描いたりいろんなことをしてみたりしますが、結局は奇跡の瞬間を待っているんです」

私はこの言葉を聞いた時、なんとも言えない親近感を感じました。

というのも私が「絵を描く」ということを真剣に考え始めた理由や、「画家という仕事を本職にしたい」と思った瞬間に、奇跡としか言いようのない現象が必ず関係していたからです。

もちろんそれは主観的なもので、他の人に取り出して見せたりすることができません。しかし、純粋に「絵を描きたい」と思った時には、その「奇跡の瞬間」を永遠に留めてみたい!という強い欲求があったのです。

それは私自身の人生を確する大きな瞬間でありましたし、その「一瞬」を逃していれば、私は今とは全く違う人生を歩んでいたことでしょう。

だから、私の人生には「奇跡を感じた記憶」と「その瞬間を遺したい」という二つのベクトルが深く根ざしているのです。

そして、私は、その奇跡の瞬間を表現し切るまで、「芸術」という分野に関心を失うことはないでしょう。私の人生を賭して表現した作品たちからそうしたことを感じていただきたいのです。

その気持ちは、いうなれば「共有したい」という気持ちともいえます。多くの人にそうした「心地の良い瞬間」や「日が差し込むような瞬間」を感じていただきたいのです。

それが私の制作理念でありますし、今回制作した「望月の宵の宴」のテーマでもあります。

制作過程を一部紹介

1番リズムカルに響く人体表現を模索中… 書いては消し書いては消しの繰り返しです
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とりあえずこんな感じで行こうかと思います 画面は私の大好きな三角構図を少しアレンジしています
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新技法を試し中 一旦イエローオカーで画面を詰めて、更に上からバーントアンバーで下層描きしていきます
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今日は素描まで進めてみた 明日は更に描きこみ、バーントアンバーで全体を統一するところまで行きたい

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今日の進行状況 下手っぴの状態から形を整えていく作業はさながら粘土細工のよう
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このお尻を描くために3時間半…今日中にグレーズを終わらせたいと思ったけど、これは難しそうですね…

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今日はここまで まだ素描の段階なので印影をつけることに注力し、彩色は施していません 次第に油もサラサラしたものからこってりしたものにシフトしていきます
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今日は人体表現を修正し続けていました 4時間かけて修正した肉体に、すげ替えたような頭。奇妙です
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役者が揃いました あとは背景にバーントアンバーを乗せ、リンシードオイルを加えた溶き油を用意し、少しづつ画面に重厚感と光沢を与えていきます
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今回の作品は現在構想中の個展にも展示する予定で、全体的なストーリーの一部となります 『だが踊り狂う者、盃事をなす者、笑い憩う者、風俗壊乱の内に皆乱れ狂い、忘 我混沌の中で皆それぞれに身を潜め、肌を黒き布で隠し覆いてしのいだ。 』 −望月の宵の宴より−

14時間に渡る制作により、下層書きから背景の彩色まで進めることができました あとは人物や小物の彩色と全体的な微調整のみですが….間に合うかな
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とりあえず今回の制作で学んだことは ・以前の制作工程を無視せず、積み重ねを大事にすること ・大きな作品は、制作期間を大きく取るべきということ 来年の二科展は101回展となります、最後まで全力で臨んでいきましょう

今日19時間に及ぶ制作の末、あと一回の調整までたどり着くことができました あとは全体に薄くグレーズを重ね、より深みのある表現へと変えていきます
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今から最後の筆入れをしていきます
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今年の二科展は101回展になります この作品がどこまでいけるかはわかりませんが、納期である8/15までになんとか完成させられました まだ修正する可能性もありますが、一旦完成です
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