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余剰の美と箪笥考察

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最近自分自身の好みや考え方がガラッと変わってきたと思う。それはここ数年読書に勤しみ、新しい知識を手に入れることができるようになったことも一つではあるし、自分自身の問題解決を自分の責任でやろうと決心したことも一つではあると思う。こと、芸術に関しては「余剰の美」であると気が付いたのはここ2~3年のことである。11年間、私はこの問題、つまり「芸術とは如何に」という問題を解くことを主題に生きてきました。それは極めてシンプルな一言「余剰の美」という言葉に集約され、美という広大無辺な世界に一つの花を添えるような答えであったと思う。

然るにこの「余剰の美」を探求するにあたって一番まず考えねばならないのは「余剰はどこにあるのか」という疑問であろうと思う。当たり前だが、この世界は必要に溢れ、必要美に溢れ(それを美と呼べるかはさておき)、様式美に溢れていると思う。例えば箪笥の板造はそれ一つで様式美として成り立っており、そこに花を添えようと思い立ったとして、衣類を引き出し、それを収納するという機能性を損なわずに「余剰の美」を敢行するとする。するとたちまちに困難にぶち当たることに気が付く、まず箪笥なら箪笥の素材である。長く使うことを想定し、この亜熱帯気候の日本において、数十年、ものによっては百年を超える年数、人々の生活を支えるそれは素材として完成している。程よく湿度を逃がし、気温を一定に保つ気密性もある。しかるにその機能性を損なわず、私たち芸術家が何かそこへアプローチしようと思ったとて、板の表面を全面塗装してしまうわけにはいかないのだ。

このように、箪笥一つのデザインをとっても、日本古来の技法や様式美には唯々感嘆しつつそこに、私たち「画家」の入る余地は極めて少ないことがわかる。いま私は箪笥を例え話としたが、皆さんがもし、同じ画家という職業にあったとして、果たしてどれだけ「余剰の美」を表現し得ようか。

もちろん、今の時分桐箪笥が標準でもあるまいし、金属でも何でも、他の素材があしらわれた箪笥ならいくらでもある。ただそれぞれにそれなりの困難はあるということを言いたいのだ。

今オンデマンド印刷のサービスのPrintfulというところに外注する形で私の絵があしらわれたグッズが登場している。技法としてはプリント版画の変形らしいが、こういう便利なものを使って「余剰の美」を弘めるのも悪くはないと思う今日この頃なのであった。

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